立科WORKTRIPでは「経営視点で検討するワーケーションPROS&CONS」と題した連続ウェビナーを開催中です。10月に開催したVol.2「ワーケーションの目的と成果をどう設定すべきか?」では、自らを「ワーケーション社労士」と称する岩田佑介さんに、ワーケーションの目的と成果についてご説明いただきました。今回はウェビナーの内容をQ&A形式にしてお届けします。
(ウェビナー配信時の様子)
Q ワーケーションの目的を設定するときに注意するべきことは?
「流行っているから」「なんかよさそう」といった曖昧な理由ではなく、自社や部署の課題解決に向けた選択肢の一つとして設定するということですね。
失敗例としてありがちなのは、チームビルドを目的に設定したはいいものの、メンバーが「チームビルドしなきゃ」という強迫観念に駆られ、よい成果が出せなかったというもの。
バケーション多めにするのか、仕事マシマシの集中する期間にするのか、解決したい課題に立ち返って設定するのがよいでしょう。
Q.おすすめのワーケーションの目的はありますか?
チームで行う場合、重要度と緊急度のマトリックスで言うところの「重要だけど緊急じゃない仕事」が向いています。
例えば、「部門の戦略を作る」、「新規事業のプランニング」など、重要だけど後回しにされがちなタスクをワーケーションの期間でやりきるというものです。ワーケーションに行くと必ず帰る時間が設定されていますから、締め切り効果でゴールに向けて集中しやすくなるんです。
私もプロジェクトメンバー同士で、「プロダクトのプロトタイプまでつくろう」と決めて、方針決定や作業時間としてワーケーションをすることがあります。成果が出せると、チームの満足度も非常に高いものになり、その後のパフォーマンスにもつながります。
Q 岩田さん自身もビジネスパートナーとワーケーションをされているとのことですが、価値を感じるポイントは?
個人的には、ワーケーションって、修学旅行に似ているなと思っていまして(笑)
プロジェクトのキックオフとして仕事を一緒にしつつ、例えば山に行きましょうといった息抜きの時間も過ごすと、圧倒的に仲良くなるんですよ。
修学旅行でひと晩過ごしたら、突然仲がよくなったクラスメートができたような感覚がワーケーションにあるなと思っていて。仕事以外の移動やご飯など一緒にすごす時間を共有することで、リモートで仕事をしていてもそれまでとはパフォーマンスがかなり変わってくるなと思いますね。
(ワーケーション中の岩田さん)
Q 昨今、社員旅行が敬遠されていると聞きますが、社員旅行とワーケーションの違いは?
社員旅行で多いのが、会社のヒエラルキーが旅先にも引き継がれているケース。「今日は無礼講だ!」と部長が言ったとしても、本当に無礼講をやったら大問題。観光を楽しむ時間でも上司に気を使う必要があり、24時間仕事をしている気分になってしまうのが敬遠される要因と思われます。
ワーケーションには様々なタイプがありますが、企業としてチームで行く場合は基本的に仕事をするため、あるいは仕事を円滑に進めていくために行くもの。あくまでも労働時間外の人間関係はフラットなんですよね。
大学でキャリア論の講義に登壇していると、学生の中には「ワーケーションできる企業じゃないと働きたくない」と言う方もいます。いまや学生にとっては、柔軟性のある社風の証として、ワーケーションは捉えられているようです。
Q 先進的な企業は、どんな目的でワーケーションを実施しているのですか?
私が観測している中ですと、慢性的な人手不足や人材流出といった課題を解決するために、ワーケーションを実施している企業が多いですね。
IT企業やベンチャー企業では、人材の市場競争があるため、採用するのも定着してもらうのも厳しい状況。さらにコロナ禍でリモートワークが続いた結果、ストレスが溜まってメンタルヘルス不調に陥ってしまうことも。
そうした課題を解決するため、企業としてワーケーションに取り組んでいるようです。ただし、こうした人材面の課題は今後どのような業界でも起こりうるので、ワーケーションの導入は時間をかけながらさらに浸透していくと思います。
Q 人事面の課題とワーケーションの効果について詳しく教えてください
ご存知の方もいると思いますが、成功するチームの要素に「心理的安全性」があげられます。これは非難や拒絶の不安がなく、安心して自分の意見を発言できる環境のことです。
つまり、羞恥心を感じることなく自然体の自分をさらけ出せるチームのことだと、私は捉えています。
弱さを見せられる間柄になるためには、関係の質を高めることが重要です。コロナ禍で集まる意味が問い直された今だからこそ、オフィスや自宅から離れて、一緒に星を眺めたり、湖を散策したり…、なにげない時間を共有することの価値がますます高まっています。
このように組織における豊かな関係性を構築するという効果から、ワーケーションが注目されているといえるでしょう。
プロフィール
岩田 佑介(いわた ゆうすけ)
岩田社会保険労務士事務所 所長
特定社会保険労務士 / 観光庁「ワーケーション推進事業」アドバイザー
大手人材会社にて政府・自治体の地方創生・地域活性化に関する政策の企画運営に従事したのち、組織人事コンサルタントとして中堅・中小企業の組織開発・人事制度設計を手掛ける。その後、ライフネット生命保険株式会社に参画し、人事部長としてリモートワーク・兼業制度などの働き方改革やダイバーシティ戦略を統括。現在では「ワーケーション社労士」として全国各地でのワーケーションを自ら実践しつつ、企業のワークスタイル変革を支援している。